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『バイアグラ (シルデナフィル) とうつ病との関係についての文献を新宿ライフクリニックの日本性機能学会専門医からご紹介』

【はじめに:バイアグラとうつ病の関係とは】


バイアグラとうつ病の関係とは

バイアグラ (シルデナフィル) とうつ病の関係 ―最新の研究で見えた勃起改善薬の意外な効果とは?


元々、うつ病の方にはED (勃起不全) の有病率が高く、またその一方でEDが有るとうつ病の発症頻度が高くなり、 うつ病とEDとは双方向性の関連性がある事が示唆されていて、この2疾患の間には密接な関係が有ると言えます。


それでは、そのEDの治療薬である所の 『バイアグラ (シルデナフィル) 』 はうつ病とはどのように関わって来るのでしょうか?


昨今の研究においては、シルデナフィルやタダラフィルなどのホスホジエステラーゼ5阻害薬 (PDE5阻害薬) には抗うつ薬様の作用を有するという報告が散見されており、 これらがインターネット検索において 『バイアグラ、シルデナフィル、うつ病』 と言ったキーワードセットでの検索頻度上昇を底上げする要因になっているという可能性が有ります。


こちらのページではうつ病とバイアグラ:シルデナフィルとの関係について新宿ライフクリニックの日本性機能学会専門医から、 国際的な文献を3つ (動物実験による基礎研究、臨床的研究、疫学的研究) このそれぞれをご紹介させて頂きつつ、 これに私見を交えてわかりやすく解説をさせて頂いております。
宜しければご一読くださいませ。


1.【文献① バイアグラ (シルデナフィル) などのPDE5阻害薬における抗うつ薬様の効果の可能性 (動物実験による基礎研究)】

バイアグラの抗うつ薬様の効果の可能性

シルデナフィルやタダラフィルなどのホスホジエステラーゼ5阻害薬 (PDE5阻害薬) は抗うつ薬様の作用を有することがすでに既存の研究にて提示されておりますが、 その作用機序自体は十分には解明されていない状況と言えます。 また腸内細菌叢 (ちょうないさいきんそう) :『腸内に棲む細菌が菌種ごとの塊となって腸の壁に張り付いている状態』 の異常が、 うつ病の発症に関連性があるという研究結果も先行する研究にて提示されております。


こちらでご紹介させて頂く文献においては、自己免疫性脳脊髄炎を人工的に引き起こし、うつ病様の行動を示すようになったラットを使用した動物実験に関して記載がされております。 この実験の結果では、ラットのうつ病様の行動は、そのラットの腸内細菌叢の編成の異常が関連しているという可能性が明らかになったと報告しており、 また、これらのラットへシルデナフィルやタダラフィルなどのホスホジエステラーゼ5阻害薬 (PDE5阻害薬) の投薬が、 ラットに対して抗うつ薬様の効果を発揮するという可能性に関しても提示しております。


この実験結果は、バイアグラ (シルデナフィル) などのPDE5阻害薬と抗うつ薬様の効果との間の因果関係については不明瞭ではあるものの、 うつ病患者を対象とした新しい臨床試験への道を開く上では、本研究は非常に有意義な存在であると言えるかと存じます。


2.【文献② バイアグラ (シルデナフィル) などのPDE5阻害薬が抗うつ薬との併用でよりうつ病を改善しうるという可能性 (臨床的研究)】

バイアグラが抗うつ薬との併用でよりうつ病を改善する可能性

うつ病は内因性のものにおいては、その発症のメカニズム自体はまだ十分には解明がされていませんが、神経伝達物質であるドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどの減少が、 その原因の1つであるという可能性が示唆されています。また体内における慢性的な炎症は脳の視床下部-下垂体系に悪影響を及ぼし、 これら神経伝達物質の放出を阻害してしまう可能性も先行の研究にて提示されております。


こちらでご紹介する文献においては、抗うつ薬であるSSRIを投薬されている18人のうつ病の患者さんに、4週間シ​​ルデナフィル : バイアグラを5mg/kgで投与したという臨床実験、 そしてタダラフィル : シアリス5mgを2か月間毎日投与された大うつ病性障害の患者270名を対象とした4つの臨床試験を含むメタアナリシスに関して、このそれぞれについて記載がされております。


抗うつ薬であるSSRIを投薬されている18人のうつ病の患者さんに4週間シ​​ルデナフィルを5mg/kgで投与した 『臨床実験』 の方では、 勃起不全の改善に伴って、ハミルトンうつ病評価尺度によるうつ病症状の顕著な改善が確認されたとの事でした。


タダラフィル5mgを2か月間毎日投与された大うつ病性障害の患者270名を対象とした4つの臨床試験を含む 『メタアナリシス』 の方では、 むしろタダラフィルの方が抗うつ薬であるSSRIより、大うつ病性障害のコントロールにおいて効果的であるという可能性が提示されました。


本文献では、これらの研究の結果として、バイアグラ:シルデナフィルが神経伝達物質および視床下部-下垂体系の調節を介して抗うつ薬様の作用を示す可能性がある事を示唆し、 シルデナフィルは単独でも、またSSRIとの併用でも、うつ病の管理に有効であるという本剤の将来性に関して解説をしております。


3.【文献③ スウェーデンの人口データベースにおけるシルデナフィルの入手しやすさと自殺率の低下との関連 (疫学的研究)】

シルデナフィルの入手しやすさと自殺率の低下の関連

性的親密さは精神の安定に良い影響を与えるという医学的ロジックはたくさん主張されています。 また月間の自殺発生率はうつ病も深く関与する社会的に重要な精神的健康の遠位指標と言えます。


こちらでご紹介する文献においては、スウェーデンの人口データベースを利用した疫学的な研究に関して記載がされております。


スウェーデンは福祉大国と言われており、客観的に住みやすそうな国というイメージが有るかと思われますが、 実は約10人から9人に一人は抗うつ薬を服用しているという、いわば 『うつ病』 大国でも有ります。


この研究では、そんなスウェーデンにおいてバイアグラ : シルデナフィルの特許失効にともなう 『入手のしやすさ』 の改善がされた状況、 その前後における、月間の自殺発生率の変動を疫学的に調査しております。 その結果としてスウェーデンの人口ベースデータ上における、特許失効前の102ヶ月間と価格引き下げ後の18ヶ月間のデータを比較した結果、 月間の自殺発生率は50~59歳の男性において想定よりも65件少なくなっていたとの事でした。


この研究の結果において、この月間の自殺発生率の低下は精神的健康と性的健康が密接に関連していることを示す重要なデータであると解釈されております。 本研究ではバイアグラ : シルデナフィルが以前より入手しやすくなった事によって、地域における総体的な性的親密さが増加し、 その結果、月間の自殺発生率が低下したという、バイアグラ : シルデナフィルによる間接的な社会的好影響の可能性に関して示唆をしております


4.【バイアグラ (シルデナフィル) とうつ病との関係:総合まとめ】

  • ―動物実験において、シルデナフィルやタダラフィルなどのホスホジエステラーゼ5阻害薬 (PDE5阻害薬) は抗うつ薬様の効果を示す可能性が示唆されました。

  • ―臨床的実験によって、バイアグラ:シルデナフィルは単独でも、また抗うつ薬であるSSRIとの併用でも、うつ病の管理に有効であるという可能性が示唆されました。

  • ―疫学的実験によって、バイアグラ : シルデナフィルが入手しやすくなると月間の自殺発生率が低下するという可能性が示唆されました。

  • ―総合まとめ:この動物実験ならびに臨床的実験はバイアグラ : シルデナフィルなどのPDE5阻害薬がうつ病のコントロールに良い影響を及ぼしているという可能性に関して報告をしております。 しかし、冒頭に記載させて頂いたように、元々うつ病とEDとは双方向性の関連性があるので、勃起不全の改善自体がうつ病の改善につながっているという可能性も否定できません。 すなわちバイアグラ : シルデナフィルから見ると直接的というより、間接的にうつ病への好影響を本剤が及ぼしている可能性があるという事になります。 この末尾の疫学的実験の結果はむしろそちら寄りで、バイアグラ : シルデナフィルによって勃起不全が改善し、性的親密さが向上する事で精神が安定し自殺が減るという、 バイアグラ : シルデナフィルから見ると間接的な好影響に関しての報告がされております。 バイアグラ (シルデナフィル) のうつ病に対する好影響に関しては、今後の薬剤と抗うつ薬様の効果との間の生物学的因果関係をより明確にする実験が必要になるかと思われました。

5.【バイアグラ (シルデナフィル) とうつ病との関係に関して:よくある質問(Q&A)】


―Q1.「バイアグラはうつ病の治療薬として使えるのでしょうか?」
A. 現在の所、バイアグラ (シルデナフィル) は「うつ病の治療薬」として認可はされておりません。ただし、動物実験や臨床的実験では、 抗うつ薬様の効果を示す可能性がある事が提示されております。


―Q2.「うつ病の人がバイアグラを服用しても大丈夫でしょうか?」
日本性機能学会専門医などの専門家の管理の下で、併存疾患のないうつ病の方がバイアグラ (シルデナフィル) を服用されるのは特に問題はないかと存じます。 むしろEDとうつ病が双方向性の関係にあるという状況においては、うつ病の方におけるEDの改善は望ましい事であるとも言えます。 ただバイアグラ (シルデナフィル) は併用禁忌薬剤、また疾患禁忌がある処方箋医薬品でもあるので、併存している疾患や全身状態、 また服薬されている内容によっては、バイアグラ (シルデナフィル) を使用する事が出来ない事も有ります。


―Q3.「バイアグラ (シルデナフィル) にうつ病の症状を悪化させるような副作用は有りますか?」
A. 現時点では、バイアグラ (シルデナフィル) による明確な因果関係の有るうつ症状の悪化は報告されておりません。 むしろうつ病の方におけるEDの改善は、うつ病自体の改善にも望ましい傾向が有ると言われております。


―Q4.「バイアグラ (シルデナフィル) の使用上で自殺率上昇のリスクはありますか?」
A.バイアグラ (シルデナフィル) の副作用説明として自殺率の上昇などは一般的では有りません。 スウェーデンの人口ベースデータにおける疫学的研究では、 バイアグラ (シルデナフィル) が入手しやすくなった事で、 むしろ予想される月間の自殺発生率が50から59歳の男性において明らかな低下を示したと報告がされております。


【引用文献】


1.Journal of neuroimmune pharmacology : the official journal of the Society on NeuroImmune Pharmacology. 2024 Aug 19;19(1);45. doi: 10.1007/s11481-024-10148-4.The Antidepressant- and Anxiolytic-Like Effects of the Phosphodiesterase Type-5 Inhibitor Tadalafil are Associated with the Modulation of the Gut-Brain Axis During CNS Autoimmunity.
Author:Eduardo Duarte-Silva, Alice Chevrollier Oriá, Ingrid Prata Mendonça, Igor Henrique Rodrigues Paiva, Klyvia Leuthier Dos Santos, Amanda Juliana Sales, José Roberto Botelho de Souza, Michael Maes, Sven Guenther Meuth, Christina Alves Peixoto
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2.CNS Neurosci Ther. 2023 Jul 14;29(10):3108–3109. doi: 10.1111/cns.14358 Sildenafil and depression: True or false prophecy PMCID: PMC10493652 PMID: 37452476
Author:Hayder M Al‐Kuraishy , Aseel Awad Alsaidan , Ali I Al‐Gareeb , Athanasios Alexiou , Marios Papadakis , Gaber El‐Saber Batiha 6
※原著はこちら


3.Eur J Epidemiol. 2021 Apr 1;36(5):531–537. doi: 10.1007/s10654-021-00738-4.Sildenafil and suicide in Sweden.
Author:Ralph Catalano, Sidra Goldman-Mellor, Tim A Bruckner, Terry Hartig
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(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2025-11-17)

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